天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「香月先生、志季子のこと、ちゃんとお姫様にしてくださいね~」

 そう言って彼女は暗い廊下を歩き去っていく。

「友人か?」

 VIP階のある階のボタンを押しながら先生が聞く。

 え、香月先生ボタン押してくれるの。

 別に感動するところでもないのに、普段が普段だからびっくりしつつ頷く。

「ええ。高校からの同級生です」
「姫ってなんだ」
「さあ……」

 私は苦笑して扉を見る。わざわざ説明することでもないだろう。

「というか君、シキコって名前はどう書くんだ。さすがに知っておかないとな、婚約者として」

 婚約者、を少し嫌味っぽく強調しながら言われ、呆れる。

「……嘘でしょう。いくらなんでも、婚約者の名前くらい記憶しておいていただかないと」
「シキコなのは知っている。論文を読んだから」

 あの論文はアメリカの医療雑誌に提出したため、全文英語なのだった。私は肩をすくめる。

「志に、季節のキ、子供のコです」
「へえ」

 彼の興味なさそうな声とともに最上階に着き、揃っておりながら小さく聞いてみる。

「ちなみに、香月先生。数日間入院というのは……」
「却下だ」

 ですよねー、と目を細めつつ頷く。ワーカーホリックというか、なんというか。いやまあ、救急やってるドクター、ワーカーホリックの割合、他の科より多い気はしているけれど!
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