天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 専門といってもまだまだ私は三十歳、医師としてはようやく羽毛が生え変ったくらいのヒヨコといっても過言じゃない。
 認定医になるにも、もうすこし臨床経験と論文が必要だし。
 けれど、自己免疫疾患の代表格であるリウマチで苦しむ祖母を長年見てきた私としては、ひとりでも多くの患者の支えになれればというのが将来の夢だ。

「せんせ、おかげさまでずいぶん楽なのよ、今月」
「ええっ、本当ですか。よかった」

 診察室に入って来た、祖母と同年代の女性患者に微笑まれ、ホッと息を吐く。
 と、いつもと付き添いが違う人だと気が付いて軽く頭を下げた。父と同じくらいの年頃だ。

「あ、初めまして。息子です。いつもは妹が……」
「ああ、いつもお世話になっております。担当医の吉武です。どうぞ、そちらに」

 丸い補助椅子を息子さんに進め、診察を始める。事前にしてもらっていた採血の結果、炎症の数値もかなり改善している。

「ああ、本当だ。新しいお薬、かなり合ってますね。よかった」
「せんせのお陰よ」

 ニコニコとする患者さん。その横から、思い切ったように息子さんが「あの」と口を開いた。

「はい?」
「申し訳ないです、母と妹からの説明では、いまいちこの病気について理解が……自分でも色々調べたのですが」
「あたしの説明が悪いっていうのかい」
「母さん、そうじゃなくて」

 軽い親子喧嘩を始めたふたりほ微笑ましく眺めながら、私は小さく頷いた。

「では、改めて私からご説明いたしますね」
「お願いします」

 息子さんがぺこりと頭を下げた。心配なんだろうなあと胸が痛む。

「まず、自己免疫疾患というものがざっくりどんなものかはご存じですか?」
「ええと、自分の免疫が自分を攻撃すること……ですよね? まあ僕、これもいまいち理解しがたいですが」
「ちなみに息子さん、花粉症ですか?」
「はい。ばっちり。春先はとても辛くて。眼球を取り出して洗いたいくらいです」
「それも免疫系の過剰反応です。本来、無害なはずのスギ花粉などに症状が引き起こされてしまうんですね。ただこれは、スギをはじめ、外から来た物質です」

 息子さんはこくっと頷く。

「それで、お母さまが患われている病気をはじめとした自己免疫疾患というものは、“自分自身の身体”を異物だと誤認して、症状が引き起こされてしまうんです。有名なものだと、リウマチだとか、潰瘍性大腸炎、それから川崎病もここに当てはまります」


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