天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 さすがの宗司さんもまずいと思ったのか、先週は家でのんびりすることにしたらしい。
 そののんびりには、思い切り私も付き合わされたのだけれど……というか、彼ののんびりは自宅で医学論文をひたすら読むという作業だった。あまり休息になっていない気がする。

「宗司さんは休み方が下手です」
「じゃあ君が教えてくれ」
「ええっ。うーん、たとえば……あ、温泉でゆっくりとか」

 思いついたことを言ったのが、間違いだった。
 まさか私まで連れ出されるとは思っていない。

「露天風呂がついてる……」

 私は高級温泉旅館の離れで、部屋付き露天風呂を見下ろしながら呟いた。
 案内してくれたおかみさんによれば、天然温泉が箱根から毎日運ばれてきているそうだ。
 さすがに沸かしなおしてはいるとのことだけれど。
 まさか、都内、それも都心に近い場所にこんなお宿があるとは思っていなかった。

 朝から惰眠を貪っている中たたき起こされて、車に詰め込まれるみたいにして連れてこられたのだ。アーリーチェックインというやつかな。

「一緒に入るか?」

 後ろから抱きすくめられて、耳元でささやかれた。
 ゾクッとするくらい耳に心地のいい低音……宗司さん、この人、自分の魅力とか全部わかっててやってる!

 本気で私を落とそうとしてる……!
 彼の体温が心地よくて、心臓がうるさいのに安心感みたいなのまであって困る。

 頬が赤いのがばれませんようにと願いながら、もがいて抜け出した。決して彼に恋をしているとかじゃなくて、緊張のせいだ。

「なっ、なにを、ばばばばばかなことを!」
「だめか」
「だめです! セクハラ!」
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