Un BUTTER
『抱かれにきた。』
そう一言、アパートの玄関先で顔も見ずに言えば。
「……ちょっともっかい言って。」
聞き取れているはずのその男が、私に二度目を要求する。
「六神と、セックスしにきた。」
三度目だろうが四度目だろうが、きっと恥ずかしいなんて感情は生まれない。
ただこれで最後だと思えば、人間大胆不敵に振る舞えるものだということを知った日。
「いいの。泣いてもやめないけど。」
疑問形にも成さない言葉に小さく頷けば、あっという間に腕を引かれて、部屋の中へと吸い込まれた。
薄暗い玄関で、壁にぬわれるよりも先に奪われる唇。
とても待てないと、余裕なんてものはプライドと共に捨て去られ。
無我夢中に齧りつくようなキスで、息する暇もなく責め立てられていく。
「んっ、ふぁ」
「息継ぎ下手くそか」
「あ、んたが、余裕なさすぎなんっ」
「喋る余裕あるならなくすけど?ん?」
荒々しい手つきで私の左手を壁にぬい合わせて、獰猛なまでの指先が私の自尊心をくすぐり始める。
「たまにはスカート履いてこいよ」
「あ、…やっ、こんなとこで…」
「急かしてみ?そしたらベッド連れてってやるから、」
「な、に言っちゃッてんの」
「春風ならやる」
「ん"、るさいっ」
耳につく温い水音に羞恥を煽られて、先に折れるのはどっちか。
「はや、はやくっむりッ」
「あー、たまんなー」
横抱きに持ち上げられて、悪友としての私たちが幕を閉じた。
ベッドに行けば、甘さばかりを恵むあんたと、甘さばかりに溺れる私。
それはきっともう、違う関係《かたち》。
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