Un BUTTER

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昼休み、会社の敷地内にあるコンビニへ行く途中。

蛙化現象を誘うスーツ姿の男がちらほら。

ほら、学生時代はスーツ姿の男性にあこがれを抱いていたのに。  

いざ自分が社会に放り込まれてしまえば、現実に染まりすぎてなんとも思わなくなるっていう、あれ。

その中にいやでも視界に入ってくるヤツ。

だっていつもお昼は、シャツ一枚にネクタイを締めている格好なのに、今日はライトグレーのベストを着ているから。

しかもまだクールビズは発動されていないのに、すでに首元に隙をつくっていて。あたかも、見てくださいといわんばかりに。

本人自覚あるのかないのか知らんけど。

ああいう、かっこつけたがりのヤツにみえてしまう。

なにあれ。

かっこよ。



「あんことバターは別々がいいな、あたし。」


コンビニで見つけた新作ベーカリーを前にそうつぶやいた私。

後ろから私の肩につくかつかないかくらいのブラウンヘアを横切って、ずいっと身を乗り出すヤツが言った。


「それな、俺もさんせー。」


その“あんバターブリオッシュ”を覗き込む横顔ったら。ヒゲあととか、あとヒゲあととか見えないくらい、うちゅくちぃ肌をしていて。

その素肌の温度に、あやうくくらりと感染しそうになるも。


「……めずらしく意見あったじゃん。」

「めずらしくもな。それとブリオッシュまで持ち出されたら、もはや何パンかわかんねーっての。」

「それな。あんパンとバターロールとブリオッシュと、彼らをいっしょくたにする真意。」

「新商品開発するよりも、いっそミックスしてけって簡単に片付ける真意な。」

「でも私、カレーラーメンは好きなんだよね。」

「そこは断然カレーうどんだろ、カレーうどん。」


そう言ってこの男は、私が手に持つカップのカレーラーメンを上から取り上げて、なぜか目の前にある“あんバターブリオッシュ”を渡してきた。


「……私のお昼、ミックスパンかよ。」

「ミックス麺は俺がもらっとく。」

 
私もあんたも決して賛同していない商品を持っているのに、とりあえず会計の列に並ぶのはなんでだろう。
 
あんバターブリオッシュを手に、私の前を並ぶヤツの背中を見つめる。ベストを透して今にも男の色気が香ってきそうな、距離。

も少し上を見上げれば、きれいに整えられたうなじがある。日本男児らしからぬというべきか、ヤツの黒髪はさらりとした猫っけだ。

この程よい背中の逆三角形を観察しながら男女においての友情というのは、どういうものなのかを考えてみる。


例えば、「幼なじみ」。

長年連れ添ってきた男女のじれじれな関係なんてのが少女漫画のあるある設定で登場するけれど。

例えば、「王子と地味子」。

下心を持って近付いたはずの王子と、まさか自分のような5軍すぎる相手を、恋愛対象にするとは思ってもみない地味子との“駆引き”の過程を友情と呼ぶ場合もしかり。

この二つの行き着く先は、“恋人”だということが読者にも分かっているから、その過程部分でいかに恋人未満のきゅんを読者に与えられるのかがなによりも重要で。

その恋人未満のきゅんが、行き着く先をより一層楽しみにさせてくれるのが男女間の友情だ。















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