ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
沓澤課長と三浦さんが出張から戻って、二週間が経った。
『おかえりなさい』
営業部全体――いや、本社全体がふたりの戻りを労い、喜んだ。
私は複雑な気分で、けれどそれをどうしても隠したくて、皆と一緒に笑ってふたりを出迎えるしかなかった。
会わない間、一緒に退社することは当然なかった。連絡を取ることも。
私の記憶にある沓澤課長は、パーティーの翌日、車の中で触れ合ったあの夜のままだ。私の腕を引く手の熱さ、首筋をなぞる指、唇とその先を暴きたがる熱。そのすべてを思い出しては、その後一度も連絡がないことにモヤモヤして、その繰り返しだ。
今後も、なにごともなかったように毎日顔を合わせるのだろうか。それで、毎日一緒に途中まで帰路を歩んで……そんなことをまた繰り返すのかもしれない。
あるいは、私の役割はもう終わりという可能性もある。あの夜に否定されたとはいっても、出張の間に一度も連絡がなかったことを思えば十分にあり得た。
明確な輪郭を持つに至らず、いつしか忘れられかけた噂は、彼が本社に戻ってからの二週間で一気に再燃した。
そのくせ、私にも沓澤課長にも直接確認する人は現れない。曖昧な形のまま、社内の至るところを漂って揺れて、それだけだ。
『おかえりなさい』
営業部全体――いや、本社全体がふたりの戻りを労い、喜んだ。
私は複雑な気分で、けれどそれをどうしても隠したくて、皆と一緒に笑ってふたりを出迎えるしかなかった。
会わない間、一緒に退社することは当然なかった。連絡を取ることも。
私の記憶にある沓澤課長は、パーティーの翌日、車の中で触れ合ったあの夜のままだ。私の腕を引く手の熱さ、首筋をなぞる指、唇とその先を暴きたがる熱。そのすべてを思い出しては、その後一度も連絡がないことにモヤモヤして、その繰り返しだ。
今後も、なにごともなかったように毎日顔を合わせるのだろうか。それで、毎日一緒に途中まで帰路を歩んで……そんなことをまた繰り返すのかもしれない。
あるいは、私の役割はもう終わりという可能性もある。あの夜に否定されたとはいっても、出張の間に一度も連絡がなかったことを思えば十分にあり得た。
明確な輪郭を持つに至らず、いつしか忘れられかけた噂は、彼が本社に戻ってからの二週間で一気に再燃した。
そのくせ、私にも沓澤課長にも直接確認する人は現れない。曖昧な形のまま、社内の至るところを漂って揺れて、それだけだ。