ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
『お言葉ですが、私は』

 あの後、私はどう続けるつもりだった?
 私は彼の恋人ではありません、だろうか。
 それとも、私はそんなものを目当てになんてしていません、だろうか。

 どちらも正解だ。
 なのに、どちらも私の中で正しくまではない。

 真剣に仕事へ取り組んでいる姿を、純粋に尊敬する気持ちはある。売上、目標、そういう言葉よりも先に社員を思う言葉が口をつくところも。
 それが恋心なのかどうかと問われると、うまく判断をつけられない。つけられないまま、自分からはなにひとつ伝えられそうになくて、ただ息苦しくてならなかった。

 だいぶ前のことになる、残業の夜のキスの理由。菅野さんと顔を合わせたパーティーの夜とその翌日の夜、首に痕を残された理由。そして二度目のキスの理由。
 どれも分からない。分からないなら尋ねるべきで、けれどできない。
 尋ねなくても察してほしいと思ってしまうのは、私の悪い癖だ。自分でも分かっていて、そのせいで今までに何度も失敗してきた自覚もある。それなのに、私はまた同じことを繰り返そうとしている。

 私は、沓澤課長が好きなのに。
 とっくにその自覚があるのに。
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