ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 苦笑しつつ、相変わらずお喋りな内藤さんに相槌を入れては笑い合う。
 店長も「ゆっくり見ていってね」と笑い、元の場所へ戻っていく。

 店内のディスプレイはところどころ、十月のハロウィンをイメージした展示やポップで可愛らしくまとめられている。
 私が在籍していた頃にも、ディスプレイは頻繁に変更したり整え直したりしていた。
 趣を感じさせる店内の雰囲気に時には合わせ、時には意外性を狙い、季節ごとにポップを作ったりアイテムを飾ったり。どうしたらもっとお客さんの目を惹けるか、もっと楽しんでもらえるか、それを考える仕事はやはりいつだって楽しかった。

 懐かしく思い出し、ふと口元が緩む。
 とそのとき、店の自動ドアが開く音がした。

 いらっしゃいませ、という店長の声が途中で途切れる。
 いつも凛とした対応で客様をお迎えする店長らしくない。訝しんだ私は、つられてドアの方向へ向き直り、そして目を見開いた。

「……ええええ?」

 思わず零れたお互いの声が中途半端に重なる。
 口元に手を添える仕種まで被り、気まずさに拍車がかかる。

 ドアの前には、見慣れない私服姿の沓澤課長が立っていた。
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