ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
実家の母は料理好きなわりに揚げ物を作るのは苦手で、とんかつといえば必ずこの店の名前が挙がっていた。
鈴香の両親が揃って厨房に立っていた頃は出前もやっていて、よく頼んだりもしてたっけ……と懐かしく思い返していると、対面に腰かける沓澤課長が、箸を持つ手とは逆の手を口元に当てて感嘆の声をあげた。
「うっわ、なにこれウメェ!」
「でしょう? 衣、めっちゃサクサクしててすごくないですか!」
「うん、持ち帰りしたいレベル……あーでも揚げたてが一番美味い気がする、なにこれ本当ヤバい……」
沓澤課長はすっかり虜らしく、自分のことのように嬉しくなる。しかも彼の感想が私の脳内と完全に一致していて、つい噴き出しそうになった。
箸を動かす沓澤課長を眺めながら、一緒に食事をするのはこれが初めてだな、と思う。休日を一緒に過ごすことも。
箸の持ち方が綺麗で、長い指に見入ってしまう。育ちの良さが滲み出ている気がして、そういえばこの人って御曹司だったな、といまさら思い至り、ひとりで勝手におかしくなる。
お会計は沓澤課長がしてくれた。財布に指を伸ばす暇もなかった。
レジに立つ鈴香が大変にこやかな笑みを浮かべていて、ものすごく居心地が悪い。そわそわと会計が終わるところを待っていると、鈴香はお釣りを沓澤課長に手渡しつつ、とんでもないことを切り出した。
鈴香の両親が揃って厨房に立っていた頃は出前もやっていて、よく頼んだりもしてたっけ……と懐かしく思い返していると、対面に腰かける沓澤課長が、箸を持つ手とは逆の手を口元に当てて感嘆の声をあげた。
「うっわ、なにこれウメェ!」
「でしょう? 衣、めっちゃサクサクしててすごくないですか!」
「うん、持ち帰りしたいレベル……あーでも揚げたてが一番美味い気がする、なにこれ本当ヤバい……」
沓澤課長はすっかり虜らしく、自分のことのように嬉しくなる。しかも彼の感想が私の脳内と完全に一致していて、つい噴き出しそうになった。
箸を動かす沓澤課長を眺めながら、一緒に食事をするのはこれが初めてだな、と思う。休日を一緒に過ごすことも。
箸の持ち方が綺麗で、長い指に見入ってしまう。育ちの良さが滲み出ている気がして、そういえばこの人って御曹司だったな、といまさら思い至り、ひとりで勝手におかしくなる。
お会計は沓澤課長がしてくれた。財布に指を伸ばす暇もなかった。
レジに立つ鈴香が大変にこやかな笑みを浮かべていて、ものすごく居心地が悪い。そわそわと会計が終わるところを待っていると、鈴香はお釣りを沓澤課長に手渡しつつ、とんでもないことを切り出した。