ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
《3》嘘をすり抜ける
その後は、支社に用があるという沓澤課長に付き合って支社の駐車場で数分待って、そして車は帰路を進み始めた。
行きの道は電車に揺られて一時間、それからあちこち寄りながら歩いて二、三十分かかった。急がずに過ごそうと思っていたから、その間、特に時間を気にすることはなかったけれど。
この後の予定を訊かれ、「なにもないです」と答える。
そういえば実家に寄ろうと思ってたんだっけ、とぼんやり思い出したものの、口には出さなかった。
この車の助手席に乗るのは、今日で三度目だ。さっきも同じことを思った。
ぼうっとしている時間が長くなればなるほど、過去二度のこの車内での彼との接触を、意識しなくても思い出してしまう。
高速道路へは向かわず、下道を選んだようだ。沓澤課長はナビに頼ることなく、かつスムーズに車を走らせている。何度かこの道を走った経験があるのかもしれなかった。
「俺がいなかった間、嫌がらせはされてないか?」
「……それは、大丈夫です」
「ならいい」
心配だったなら、出張の間、一度くらい連絡をくれても良かったんじゃないですか。
喉まで出かかったその言葉を、私は無理やり呑み込んだ。笑いを含んだ囁きが脳内をぐるぐると回り続け、ひとりで勝手に恥ずかしくなる。
行きの道は電車に揺られて一時間、それからあちこち寄りながら歩いて二、三十分かかった。急がずに過ごそうと思っていたから、その間、特に時間を気にすることはなかったけれど。
この後の予定を訊かれ、「なにもないです」と答える。
そういえば実家に寄ろうと思ってたんだっけ、とぼんやり思い出したものの、口には出さなかった。
この車の助手席に乗るのは、今日で三度目だ。さっきも同じことを思った。
ぼうっとしている時間が長くなればなるほど、過去二度のこの車内での彼との接触を、意識しなくても思い出してしまう。
高速道路へは向かわず、下道を選んだようだ。沓澤課長はナビに頼ることなく、かつスムーズに車を走らせている。何度かこの道を走った経験があるのかもしれなかった。
「俺がいなかった間、嫌がらせはされてないか?」
「……それは、大丈夫です」
「ならいい」
心配だったなら、出張の間、一度くらい連絡をくれても良かったんじゃないですか。
喉まで出かかったその言葉を、私は無理やり呑み込んだ。笑いを含んだ囁きが脳内をぐるぐると回り続け、ひとりで勝手に恥ずかしくなる。