ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 仕事中に、そんなことを考えていたなんて。
 背徳的であり、また倒錯的でもあるその考え方は、普段のあなたからひどく懸け離れている。

「……嘘」
「嘘じゃない。俺はあんたに嘘なんかつかない」
「嘘です! そんなわけ」
「試してんのかってあんな泣きそうな顔で訊かれて、すげえ焦ったんだぞ。もしかしてなんにも伝わってねえのかよって」

 頬に大きな手を添えられ、逸らしていた顔を無理やり正面に向き直される。
 今度こそ逃げ場はなかった。真っ赤に染まった顔をごまかせるはずもない。情熱的に揺らぐ瞳に囚われたきり、私はなにひとつ言葉を発せなくなる。

「もう待てない。好きなんだろ、俺のこと」
「あ、う……」
「それから、ここは職場じゃない。『課長』って呼ぶのは禁止で」

 返事は求められていなかったらしい。
 苦し紛れにもう一度顔を逸らそうとしたけれど、結局、それよりも先に、私の唇は茹だるような熱に侵された彼のそれに塞がれてしまった。
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