ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~

《3》イミテーション

 営業課の事務になって、およそ一年。
 やれ栄転だ出世だと、周囲からは当時さんざん持てはやされた。同期の――特に果歩と雄平の反応は大きかった。果歩は自分のことのように喜んでくれたし、雄平は雄平で、自分のことのように周囲に自慢していた。

 今となっては苦笑が浮かぶばかりになってしまった思い出と一緒に、それとは少々異なる記憶も脳裏に蘇ってくる。

 ――沓澤さんと、同じ部署。

 本社には私よりもキャリアが上の女性陣が多い。そうした人たちから、羨望ともやっかみともつかない、なんとも表現しがたい視線を向けられていたのも事実だ。
 ときには遠慮がちに、ときには無遠慮に向けられる関心に、私は怯えと困惑を一緒くたに覚えていた。

 とはいえ、当時の私は彼氏持ちだった。
 配属当初の業務の引き継ぎは、繰り返しになるけれど沓澤代理から受けた。その時点で、私が彼に対して抱いた感想はただひとつ、〝うわぁ沓澤代理って本当に仕事ができる人なんだなぁ〟のみだ。
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