ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 少し迷った後、私はバッグの中をごそごそと漁り出した。
 完全に偶然だけれど、今日は確か喉に良さそうなフレーバーを選んでいたはずだ。

 玄関先でバッグを漁り始めた私を、沓澤代理が怪訝そうに眺めている。
 私が取り出したのは、円筒型の缶がひとつ、ふたつ、三つ。それぞれに巻かれたラベルシールを見たらしい沓澤代理が、微かに目を見開いた。

 メロン、ハッカ、柚子はちみつ。それぞれが別々の缶入りだ。
 私が両手をいっぱいにして持つそれは、昨年まで勤めていた店舗で購入した飴の缶だ。突然の自社製品の登場に、沓澤代理はぽかんと目を見開いたきり動かない。

「余計なお世話かもしれないですけど、もし良ければお好きなのをどうぞ。すみません、ちゃんとしたのど飴って持ち歩かないので」
「ええ~……それ完全に自社製品じゃん。愛社精神すごいな」
「こ、このシリーズの飴が好きっていうだけですよ。無理やり買わされたとかそういうわけでは決して」

 やはり余計なお世話だったかもしれない。
 すぐに立ち去れば良かったと後悔を覚えたけれど、意外にも沓澤代理の関心はしっかりと私の手元へ向いている。
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