ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 私の悪い癖だ。
 相手に、自分の本心を伝えるのが苦手なのだ。
 なにも元彼に限ったことではなく、友人や家族、他の誰に対しても。

 だから果歩は特別な存在だ。
 どんなことも話せる友人は、彼女が人生で初かもしれない。

「今回の話だけじゃなくて、いろいろ積もり積もってって感じだったから、なんか面倒で」
「そっかぁ。ていうか聞けば聞くほどあいつって最低じゃんね……」
「はは、でももう終わったことだしさ。これからも社内で顔を合わせるのはキツいけど」

 元彼の雄平(ゆうへい)も、果歩と同じく私の同期だ。
 つまりは果歩とも同期で、だからこそ果歩の怒りは強い。なまじ顔見知りである分、不愉快な気分は簡単に増してしまうのだろう。

「あーもう、つまんない男の話なんかやめやめ! で、どうなのそれから? 最近話してなかったけど、新しい恋とかは」
「ないない。独り身って気楽だなぁって心の底から思ってる」

 笑いながら、さっきのようにひらひらと手を振ってみせると、果歩はあからさまに顔をしかめた。なにか言いたそうな顔だとは思ったけれど、あえて私からは触れない。
 果歩には大学時代から付き合っている恋人がいる。相手は彼女より三つ年上で、結婚についてもちらほら考えているみたいだ。

 そういうのは、私はまだいい。
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