ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「これがいいんだよな。ビニール包装で十分なのに、あえてわざわざ小洒落たデザインの缶っていう」

 柚子はちみつ味の缶を指でつつき、沓澤代理はそう呟いた。
 いつの間にか彼が腰かける椅子は逆向きになっていて、左右に軽く揺らされる椅子が、キィ、とときおり甲高い音を立てる。

 学生じみた仕種だ。あは、と声を出して笑いそうになった私は、慌てて真面目な顔を取り繕った。独り言だったのかもしれないと思いつつも、「はい」と小さく相槌を入れる。

 ビニールのパッケージではなく、筒状の缶に入った飴。フレーバーのラインナップが豊富なこの飴は、ラベルこそそれぞれ異なるものの、缶の形状はすべて統一されている。高級感とまではいかないけれど、食料品店や量販店などで販売されている飴に比べると、独特の存在感はある。
 昔からある当社の商品のひとつだ。通常の飴に比べてひと粒ひと粒の大きさが控えめな分、どのフレーバーも味が濃厚に仕上げられている。

 元々飴好きではあったけれど、私がこれを集め始めた理由には、もっとはっきりしたものがあった。
 コレクションしたくなる気持ちを擽る、パッケージのデザインだ。
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