ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 興味を持ってもらえて、本当の味を知ってもらえて、美味しく食べてもらえて、パッケージは思い出の品物になって……誰かが誰かと楽しく過ごす時間に添えられるなら、飴だってきっと本望だ。
 もちろん、飴に限らず、どのお土産やお菓子にとっても。

「現場の仕事、好きでした。キツいこともいっぱいありましたけど、楽しいことのほうが先に思い出せるっていうか」

 思い出の余韻が徐々に薄まっていく中、はっとした。
 あ、と苦々しい声が零れる。いくらなんでも喋りすぎた。残業へ巻き込んだ相手に対し、どこまで空気の読めない行動に出てしまったのかと、私は血の気を引かせる。

「す、すみません。取り留めもない話を長々と、失礼しまし……」

 顔を上げて放った言葉の最後は、音にならなかった。
 目が合った沓澤代理が、頬杖をつきながら、見たこともないくらい穏やかな顔で笑っていたからだ。
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