ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 進めていた作業を慌てて中断し、私はテーブルの側へ向かう。
 手前側に腰かけていた(えん)()さんと(おか)さんが横にずれてくれて、私は近くの椅子を引っ張ってきて端に座る。

 こうしたミーティングで声をかけられることは皆無ではないけれど、ごくまれだ。
 しかもこれだけピリピリした雰囲気の中、失言でもしてしまわないだろうかと急に不安が襲ってくる。

 そんな私の内心なんて知るはずもない沓澤代理は、手元の資料から視線を上げて口を開いた。

「那須野さん、前は木乃田(きのだ)店にいましたよね」
「は、はい。二年ほど」
「意見を聞かせてください。現場経験者の意見が複数あるほうが助かりますので」

 ……嘘。
 四人分の視線によるプレッシャーに、ぞわりと背筋が慄く。

「あの、ですが私は……」
「そうですね、那須野さんもうちの課の一員です。那須野さんの意見って、こういう場ではあまり聞いたことがないから興味深いな。お願いできませんか」

 返してきたのは沓澤代理ではなく、彼の隣に座る三浦さんだ。
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