ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 ミーティングが終わらない原因が彼だということは、傍目からも一目瞭然だった。『しかし』とか『でも』とか、三浦さんは幾度も否定的な意見を述べていた。私に一歩も引かせようとしない今の言葉にも、挑戦的な気配が宿っている。

 逃げ場を奪う言い方をされた上に「さっとでいいから目を通してみて」と資料を手渡され、ますます後に引けなくなる。動揺を隠しきれずじまいで、私は渡された書類に視線を落とした。

 なにをそこまで長々と揉めていたのか。
 資料に記されていたある単語を見た瞬間、私は妙に納得してしまった。

 議題は、新店舗のスタンスと方向性について。

 独立型、テナント型、アンテナショップ型と、当社が展開する店舗はスタンス別にさまざまな形態を取っている。
 そんな中、来々年度に新規オープンを予定している店舗の具体的な方向性が、いまだに決定していない。
 資料はクリップでふたつ分の束にまとめられていて、うちひとつは常務をはじめとした重役が中心となってまとめた案、もうひとつは若手が中心となってまとめた案のようだ。後者には三浦さんの名前も入っている。
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