ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「うん。けど店舗の経営は絶対切れない。古いからって昔のやり方を闇雲に追い出してたんじゃ、いずれガタがくる。だからあんたからああいう意見が出たっていうだけで貴重だった」
「あ、ありがとうございます」

 売上が半分でも利益が半分でもなく、社員が半分。そう言い表すところが彼らしいし、彼らしいと思えるようになってきた。
 沓澤代理は、どんな企画を考えるときにも、必ずそれを動かす人材を見ている。数字ではなく、それを生み出す〝人〟を。
 だから、上役と若手の間に挟まってまで調整してしまう。どちらの意見も大事に考えて、考えすぎて、悩んで――そのために使った時間を惜しまないというのは、なかなかできることではない。

 人を人として捉えることを厭わない考え方は、きっと間違っていない。
 単に仕事ができるという面だけではなく、そういうところを尊敬したくなる。

 日報をファイルに綴じながら、思わず口元が緩んだ。
< 80 / 242 >

この作品をシェア

pagetop