ビター × スイート
「女の子は特にさー、新しい恋とかしゃちゃえば前の男のことなんてすぐにさっぱり忘れちゃうって。・・・あ、そうだ!この際琉世なんてどお?こんなんだけど割とおすすめ」

言いながら、麻生さんは、揃えた五本指で四宮さんをおすすめしてきた。

「え」、と、戸惑う私。

四宮さんも「は?」と困惑顔をして、それから、「何言ってんだ・・・」と、呆れたように怒り出す。

「おまえ、ふざけるのもいい加減にしろ」

「ふざけてないよー。だって、琉世、のあちゃんみたいなタイプ好きでしょ?小さくて小動物系のー」

「・・・っ、ぁあ!?」

「ここまで連れてきたのもさー、タイプの子だったからじゃなーい?あわよくば、弱ってるところ口説き落としてやろうみたいな」

「・・・っ!!・・・、てめえ・・・っ、ほんとにふざけんな・・・っ!!」

四宮さんが、真っ赤な顔でガタッと席を立ち上がる。

今にも掴みかかりそう。

本当に、目の前でケンカが始まってしまいそうな雰囲気で、私は怖くてハラハラとする。

「あ、あの、落ち着いて・・・」

「あー・・・、ほらほら琉世、のあちゃん怖がってるじゃんかー。そんなんじゃ始まる恋も始まらないでしょー。ほら、座って。これでも飲んで」

そう言うと、麻生さんはまだ中身が残っている四宮さんのグラスを差し出した。

四宮さんは自棄になった表情で、グラスを無言で受け取ると、ぐいーっと全部飲み干した。


(あ、すごい勢いで全部飲んだ・・・。やっぱりお酒じゃなかったのかな・・・)


と、思ったけれど、グラスを置いて、こちらを向いた四宮さんの目がやけに据わってしまってる。

超真顔。

これは・・・、結構度が高いお酒が入っていたのでは・・・。

「・・・君は、確かにかわいい」

「・・・・・・」


(え!?)


目が据わりまくっている四宮さんに突然そんなことを言われたために、私はわけがわからなすぎて、何度も瞬きしてしまう。

と、突然、一体どうしたんですか・・・!?

「素直だし」

「え、えっと・・・?」

「けど、口説こうと思ってここに連れてきたわけじゃない」

「は、はあ」

「ただ、なんだかほっとけなくて・・・」

そこまで言うと、四宮さんは急に電池が切れたようにバタッと机に突っ伏した。

すー、すー、と、寝息が聞こえる。


(え!?ええ・・・!?)


ここで突然寝てしまう!?

いろんなことに驚いて、私は戸惑わずにはいられない。

「あー、琉世寝ちゃったかー」

麻生さんはこうなることが全部わかっていたように、「はははー」と軽く笑った。

けれど私は笑えない。
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