各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果
『そういうところが嫌なんだよ』
「え……」
『ああ言えばこう言う。自分は仕事ができます、がんばってますってアピールも。もううんざりだ』
「そんな……」
付き合い始めの頃、彼が私に『なんに対しても一生懸命なところが素敵だ』と言ってくれたのは嘘だったのだろうか。
『だいたい久々のデートが公園って。ガキの遠足か? 地味なんだよ、テーマパークとかいくらでもあるだろ』
彼が言ったテーマパークは、以前彼自身が『人が多くて疲れる』と言っていたので、プランから真っ先に除外したのだ。ひそかに行きたいと思っていた私は、内心がっかりしたのを覚えている。だけど今それを指摘したところで、火に油を注ぐだけだ。
スマホを耳にあてたまま黙っていると、ひときわ大きなため息が聞こえた。
『おまえみたいな気が利かなくてかわいくない女、一年も付き合って損した。もう連絡してこないでくれ。じゃあな』
直後、通話が切れた。頭をハンマーで殴られたような衝撃で、言葉が出ない。頭が真っ白になったままその場に立ち尽くす。
「佐伯さん」
背中から聞こえた声に振り返ると、課長が立っていた。
「課長……いつから……」
続きが声にならない私の問いに、彼は微苦笑のみをくれる。
「これ、足元の荷物かごに置いてありましたが、忘れ物ではないですか?」
各務課長が軽く持ち上げてみせた手には、トート型の保冷バッグがぶら下がっていた。
「え……」
『ああ言えばこう言う。自分は仕事ができます、がんばってますってアピールも。もううんざりだ』
「そんな……」
付き合い始めの頃、彼が私に『なんに対しても一生懸命なところが素敵だ』と言ってくれたのは嘘だったのだろうか。
『だいたい久々のデートが公園って。ガキの遠足か? 地味なんだよ、テーマパークとかいくらでもあるだろ』
彼が言ったテーマパークは、以前彼自身が『人が多くて疲れる』と言っていたので、プランから真っ先に除外したのだ。ひそかに行きたいと思っていた私は、内心がっかりしたのを覚えている。だけど今それを指摘したところで、火に油を注ぐだけだ。
スマホを耳にあてたまま黙っていると、ひときわ大きなため息が聞こえた。
『おまえみたいな気が利かなくてかわいくない女、一年も付き合って損した。もう連絡してこないでくれ。じゃあな』
直後、通話が切れた。頭をハンマーで殴られたような衝撃で、言葉が出ない。頭が真っ白になったままその場に立ち尽くす。
「佐伯さん」
背中から聞こえた声に振り返ると、課長が立っていた。
「課長……いつから……」
続きが声にならない私の問いに、彼は微苦笑のみをくれる。
「これ、足元の荷物かごに置いてありましたが、忘れ物ではないですか?」
各務課長が軽く持ち上げてみせた手には、トート型の保冷バッグがぶら下がっていた。