各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果
 あれこれと考える私の横で、彼自身は顔色ひとつ変えずに口を開く。

「私は結婚も恋愛も仕事と関係ないところでやるのが信条です。出世に結婚相手の親の手心などひつようありません。そんなものなくても自分の実力だけで十分やっていけるのでご心配なく。ああ、もともと園田さんに心配していただく義理はありませんでしたね」

 真顔のままの課長とは対照的に、園田さんは顔を真っ赤にして肩を震わせている。もしかしたら、出世うんぬんというのは建前で、各務さんを本気で好きになっていたのではないだろうか。

 かわいそうに。この人はどんな美人に言い寄られてもなびかないことで有名なのよ……。

 それこそ、この一か月の間にどれだけの女性社員がアタックとブロークンをくり返していることやら。
 秘書課の大和撫子美女も受付の天然系美少女ちゃんも、もれなく惨敗だったと聞く。食事の誘いにさえうなずいてくれなかったらしい。

 そうとは知らない園田さんは、不満をあらわにしながら口を開く。

「恋人がいらっしゃるなら、最初からお見合いをお断りすればよかったじゃありませんか」
「こちらからは私の上司を通して一度はお断りしたはずです。それを『どうしても』とごねたのはそちらではなかったでしょうか。取引先の役員のごり押しを二度も断れば、さすがに角が立ちますから」

 各務課長は淡々と返してはいるが、言葉の端々に冷たさがにじんでいる。
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