大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「Are you alright? Need a hand?」
「あ…… yes, thank you. I’m fine. Really.」

 顔を上げると、そこに立っていたのは、さっき基調講演を終えたばかりの上廻穂高だったのだ。

(うそ、本物……!)

「日本人、か。どこか痛めてない?」

 穂高は自然に日本語へ切り替え、覗き込むように目を合わせてくる。

「い、いえ……っ!」

 私の頭の中では、講演の内容がまだ熱を帯びてぐるぐる回っていた。
 腸内細菌と脳神経の双方向性、ストレス耐性の代謝物、あの切れ味の良いデータと仮説。

(聞きたいことが山ほどある。……今、話さないと絶対後悔する!)

 気づけば、私は廊下中に響く声で叫んでいた。

「あの……あのっ! 少しだけでいいのでお話できますか! 私、あなたの研究をもっと知りたいんです! 聞きたいことも山ほどあって……。今日、私、あなたのファンになったんです!」

 我ながらありえないテンションだった。
 けれど穂高は驚きつつも、すぐに柔らかく笑ってくれた。

「いいよ」

 その瞬間、自分の中で経験したことない不思議な鼓動が一気に響いた。

 これが、穂高との最初の出会いだ。
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