大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
 ***

 朝の露天風呂は驚くほど気持ちが良かった。

 澄んだ空気の向こうに遠くの山並みがくっきり見える。
 湯気の中で後ろから抱き寄せられたまま、私は穂高の方へ振り向いて口を開く。

「昨日、ごめんね? なんか、泣いちゃって……」
「いいんだよ。まだ結婚してたこと、後悔してる?」

「うん。それはすごく後悔してる。でも……もっと後悔してるのは、あの時、穂高と別れたことだよ。私はね、結婚したくないって思う穂高が、私のことをそこまで好きじゃないって思い込んでたの。あの頃の私は、本当に極端だった。……でも、それくらい好きだった」

 あの頃の私にとって、結婚は、今の私が思う意味とは違った。
< 134 / 209 >

この作品をシェア

pagetop