大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
「母が亡くなって、俺はひとりで暮らし始めて、それから勉強にのめり込んだ。研究だって、最初は『家に戻らないための逃げ場所』だった。でも、気づけば本気になってた。全部から目をそらして俺はこの道に進むしかないって、どこかで決め込んでたんだと思う」
そして彼は、少し照れたように笑った。
「でも……千紘に出会って、千紘がすごく好きになった。まともな恋愛なんてきっとできないって思ってたのに、それには驚いた」
「私も大好きだった。今は……もっと」
言った瞬間、湯気の中で穂高がふっと笑った。
「なのに俺は……あんな家庭しか知らなかったから、結婚にいいイメージもなくて。千紘を好きな研究から離すのも嫌で。千紘が『結婚してずっと一緒にいたい』って言ってくれたのに、俺は『結婚しなくても一緒にいられる』なんて言ってしまった」
あの時の言葉の背景が、初めてつながる。