大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「母さんが離婚を決めた時、父は俺を連れていかせまいと必死だった。跡取りだからって。でも俺は、迷わず母さんと家を出た。姉はもう父の会社に入って信頼もつかんでたから、『ここは私が継ぐから、あんたは好きに生きなさい。母さんのことだけはよろしく』って背中を押してくれた」
「瑞穂さんらしいですね……」

「あぁ。でも母さんは、そのあとすぐ病気で亡くなった。最後の時間を父さんじゃなく、俺と過ごしたかったんだと思う。その間に、料理も家事も、生きていく力を全部教えてくれた。……もしかしたら母さんは、何もできない俺が特に心配だったのかもしれないって、後になって思った」

「お母さまは、最後の自分の生き方を、自分で決めたかったんでしょうね」

 その気持ちはなんとなくわかる。
 今のままの環境では、自分の気持ちを大事にできないと感じる気持ち。

 私の言葉に、穂高は静かに頷いた。
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