大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
バッと、穂高の胸元を掴んでいた手を離す。
ネクタイが歪み、シャツがえらいことになっていた。
「ご、ごめん……ぐちゃぐちゃになって……」
震える指で必死に直そうとした瞬間、穂高が私の手首を掴んだ。
「千紘も心が決まったならよかった。じゃあ、今すぐ結婚しよう」
彼の胸ポケットからぺらりと紙が一枚取り出される。
それはとても既視感のある紙で……。
「え……婚姻届……? は? ちょ、ちょっと待って、なんでこんなもの持ってるの」
「ずっと持ってるよ、一年前からね。千紘の心が決まるのを待ってたんだ」
顔が一気に熱くなる。
(いや、決まったとは言いましたが! なんかずるくないです⁉︎)
しかも、気付けば篠田さんだけでなく、興味津々の顔で私たちを見ている部のメンバーの顔まで見える。
「ええっと……っ」
「ほら、もうすぐ始業時間になる。仕事に遅れが出たら困るだろ?」
(そのせかし方はどうなんでしょう!)