大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「よし、分かった! 明日やってみる。ありがと! メモしとこ……」

 立ち上がろうとした瞬間、手首を掴まれる。

「千紘、ちょっと待って。お礼も足りないよ」
「さっき言ったじゃん、『ありがと』って」
「言葉だけじゃ満足できない。それにご褒美だってまだだけど?」

 甘く目を細める穂高。
 本当に……この人はいつまでたっても甘いし、ずるい。

「あのね、今メモしないと忘れちゃうの」
「千紘が? 忘れたこと、一度もないよね」

 自分のことを自分より知っている夫にぐうの音も出ない。
 ハァ、と小さく息を吐いた。

「……仕方ないな」

 それは、いいよ、の合図だ。
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