大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
走るようにトイレへ駆け込み、そのまま便器に身を折りたたむ。
「うぇっ……」
昨日の夜から食べていないのだから、胃液しか出ない。
ただただ、気持ち悪さだけが身体を支配していく。
その時、気づけばもう一人の自分がとなりに立っていて、冷静に私に言う。
『あなた、ずっと前から、気づかないフリをしてただけなんじゃない?』
匡輔のスマホのロック。常に持ち歩く癖。帰りの遅さ……。
それに、美晴さんが彼氏の話題を私にするときの顔が重なる。
しかも、もうずいぶん前から彼女は今の大好きな彼氏と付き合っていたはずだ。
それは私が結婚して、数か月もたたない頃だったように思う。
小さな違和感たちがあっても、衝突を恐れ、それに目を背けてきた。その結果が今だ。
「じゃあ、今さら泣いてもしょうがないくらい遅いよね……」
そう言った瞬間、不意にポロリと涙がこぼれた。
「……だから遅いって。今じゃないよ」
どうして、こんな朝に。仕事のある日に限って……。
それでも、職場には行かなきゃいけない。
考えてみれば、ロッカールームで化粧直しはできるはずだ。
私は涙を乱暴にぬぐい、深呼吸をひとつしてトイレを飛び出した。