大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 1時間後。寝室に入ってきた匡輔が、何も言わず隣のベッドに倒れ込み、すぐにいびきをかき始めた。

 リビングに戻ると、リモコンだけでなく、ビールの空き缶やコンビニ袋、新聞などが散乱していた。嵐でも通ったようだ。

(証拠……か)

 私は匡輔の鞄をそっと探った。

 財布からはレシートやカード類がごっそり出てくる。それを一つ一つ確認していく。

 リーズナブルで人気のイタリアンのレシート。それからホテルのポイントカード……簡単に見つかった。

 お金にうるさい匡輔だからこそ、律儀に持ち歩いていたのだろう。それが裏目に出ている。
 スタンプは、もう驚くほど溜まりきっていた。

 私は全部を一枚一枚、写真に撮った。

 次に彼のスマホだ。
 寝室で眠る匡輔の枕元に置いてあって、ロック解除はいつも目の前で彼の手の動きを見ていたので一瞬で分かった。
 
 まず、中の写真だ。驚くほど出てくる。
 私が今までずっと彼のスマホを覗いていなかったのが功を奏してか、どんどんガードが甘くなっていたのだろう。

 二人で出かけた写真、腕を絡めた写真、ベッドと思われる場所の写真……。匡輔は撮っているほうなのか写ってないが、行為の最中の動画まであった。

 こんな簡単に見つけられる場所において、どれだけバカにされていたんだろう。

 そしてここまでしておいて、あちらから離婚も提案してこなかったのはなんでだろう。それなら早く別れてと言って欲しかった。

 悔しさで、涙と手の震えが止まらなかった。
 私は写真もメッセージもすべて自分のスマホに保存し、念のためパソコンにも送信して、フォルダにまとめた。

 涙が止まらず、動画を見るたび吐きそうになっていたものの、最後には涙はもう出なかった。

 証拠を一つ一つ確認しながら、もう泣く価値すらない相手だったんだと気づいてしまったからだ。
< 42 / 209 >

この作品をシェア

pagetop