大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
「あ、そうだ。穂高に相談したかったの。今、β-ガラクトシダーゼ誘導発現系で、温度変えても折りたたみが安定しなくて……。培養条件いじっても凝集体になるし――んっ……」
穂高が唐突に私にキスをして、そのままソファに押し倒した。
「ちょっと……話の途中なんだけど」
「煽ったのは千紘だろ。ここで『はいそうですか』って君の研究の話を続けられると思う?」
「大人なんだから、我慢したら?」
「大人だから、好きな女性を前にしたら我慢できないんだよ」
そう言ってキスされたらもうダメ。
私だって応えてしまう。
あれは、本当の意味で恋人同士だった。
触れられれば簡単に心がほどけて、穂高が笑えば私も自然に笑えた。
彼の腕の中で眠るのが何より至福だった。
あんなふうに、私のすべてを預けた相手は、後にも先にも穂高だけだった。
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