大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
 もちろん、助けてもらったことには感謝している。
 告白されたときも、あぁ、そういうことか……とは思ったが、悩んだ末に断った。

 私は穂高しか好きにならなかったし、穂高といられないなら、誰とも付き合わないと思っていたから。

 けれど、その直後に事件が起こった。
 匡輔の父親が倒れたのだ。

「なんでもするから、お願いだ。結婚してくれ。先の短い父さんに結婚した姿を見せて安心させたい」

 深く頭を下げて泣きそうな声を出す匡輔を、私は無下にできなかった。
 親を想う気持ちは分かってしまうから。

 それに結婚をしたいという気持ちは、『相手への愛の大きさ』だと私は思っていた。だからきっと匡輔は私をかなり好きでいてくれているんだろう。穂高よりずっと大きな愛があるんだろう。

 そして私は匡輔との結婚に頷いた。

 結婚して少しして、匡輔の父親は奇跡的に回復した。
 よかった。と、その時は本気で思った。

 そのあとは、絵に描いたような――普通の結婚生活だ。
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