大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 意味が分かったのは、マンションに到着して扉を開けた瞬間だった。
 部屋いっぱいに広がる、良い匂い。オリーブオイルや、香ばしいハーブの香りが混ざっている。

「ただいまー」
「おかえりなさい。この人が噂の……」

 キッチンに立っていたのは、エプロン姿の若い男性。
 目元は瑞穂さんにそっくりで、背が高い。百七十八センチはあるだろう。

 数秒見ただけで分かる。

 ――この子が、康太くんだ。

「康太くん、はじめまして。でも、はじめましてって感じじゃないんです。よくお話聞いていたので」
「いらっしゃい。千紘さんですよね。僕も同じです。話聞きすぎて、もう知り合いみたいな気分で」
「ふふ……」

 私は自然と笑って、手を差し出した。
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