大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「ごめんなさい、手土産もなく……」
「いや、どうせ無理やり連れてこられたんだろうし。むしろ千紘さんの方が、お土産もらっていい立場だと思いますよ」

「ちょっと、この子かわいくないでしょ! 正論言うからさらにかわいくないのよ!」

 瑞穂さんが眉を寄せる。そのやり取りがあまりにも微笑ましくて、つい口元が緩んだ。

「すごく仲いいですね」

 言うと、康太くんは少し照れたように顔を顰め、瑞穂さんは肩をすくめた。

「母一人子一人ですもん。ケンカもするけど、まぁ楽しいわよ」
「穂高さんもよく来て、色々教えてくれるんだ。料理、穂高さんがきっかけでハマったんだよ」

 その名前を聞くと、きゅっと胸が痛くなる。

 あの飲み会の夜。テーブルの下で突然つながれた手。何度も思い出してしまう、はっきり意味は分からないでいるあの言葉も……。
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