大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「さぁさぁ、座って。千紘さん、今日はゆっくり話すんだから!」
「あ、はい。お手伝い、なにか……」
「大丈夫。座ってて。母さんも絶対手出すなよ」

 康太くんが言う。

「はーい。……ね、千紘さん。聞いて? うちの息子、私にはこんななのに穂高が来たときだけ『穂高さん穂高さん』って慕って仕方ないの。今は大学も穂高がいったところ目指したいって、今まで苦手だった英語まで真剣に勉強し始めて」
「母さん、それ言うなって」

 そんな二人のやり取りが柔らかい。仲がいいのがよくわかる。

 そして料理をする康太くんの横顔を見た瞬間、ふっと思い出した顔があった。

 目元の凛々しさも、料理に集中するときの真剣な視線も、ほんの少しだけ穂高に似ていた。

 そうか、瑞穂さんと穂高は兄弟なんだから、瑞穂さんに似ている康太くんも穂高に似てるんだよね。

 私はなぜだかそんな彼から、視線をそらすことができなかった。

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