大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 それから少しして、瑞穂さんがワインを注いでくれて、ちびちびと飲みながら取り留めなく話をした。

 今の仕事のこと。研究のこと。開発している新商品のこと。

 新人のころ、まだ右も左も分からなくて、でも研究という同じ言語が通じる大人に出会えて嬉しくて、よく夜中まで話し込んでいた。あの頃を思い出して嬉しくなる。

「どうぞ」

 落ち着いたタイミングを見計らうように、康太くんが料理を並べてくれた。
 サーモンのカルパッチョ、彩り鮮やかなバーニャカウダ、香り高いブルスケッタ。どれもワインに合うし、何より私のど真ん中の好物ばかりだ。

「わぁ! 好きなのばっかり!」

 いただきます、と手を合わせてブルスケッタをかじる。
 カリッとしたバケットの香ばしさと、トマトの酸味、オリーブのほのかな苦みが一気に広がった。
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