運命の人 ~何度、生まれ変わっても~ 【全年齢版】
エピローグ2032年編
数えられないほど太古の昔
私たちは大きなエネルギーから生まれた
そのエネルギーの正体は誰にもわからない
けれど誰かが名付けた
その名が神だった
神は死なないのではない
常に生まれ続けているんだ
何もないところから始まった
すべては無だった
私たちは何もないところから生まれた
ここには何もなかった
今だって何も持ってなどいない
すべては0から始まり
いつか0へ還る
そして0たちがくっついて
メビウスの輪を形成する
駅の階段を昇っていたら、前を歩く女性のポケットから、白いハンカチが落ちた。
風にふわりと舞って、俺の足元に落ちる。
何気なく拾い上げて、目を落とした瞬間、息が止まった。
フィリックスの刺繍。
懐かしい。けれど、なぜ懐かしいのかがわからない。
ただ、胸の奥がざわついた。
俺はそのまま階段を駆け上がった。
彼女の横に並び、声をかける。
「……あの、落としましたよ」
振り返った彼女の顔を見た瞬間、時間が止まった気がした。
どこかで、会ったことがある。
夢の中か、もっと遠い記憶の中か。
でも、確かに知っている気がした。
「ああ、ありが──」
彼女が言いかけたとき、俺は思わず訊いていた。
「……前に会ったことない?」
彼女の目が一瞬、揺れた。
でもすぐに、冷たい声が返ってきた。
「ない。こんなところでナンパ? やめてよ」
ハンカチを奪うように受け取って、彼女は足早に去っていった。
俺はその背中を見送るしかなかった。
何も言えず、ただ、胸のざわめきだけが残った。
電車に乗り込んで、スマホを見ていた。
さっきのことが頭から離れない。
あの顔、あの声、あの刺繍。
何かを思い出せそうで、でも届かない。
──バンバンッ!
突然、窓が叩かれる音。
顔を上げると、そこに彼女がいた。
さっきの女性。
息を切らしながら、何かを叫んでいる。
「私もどこかで会ったことある気がする! すごく大事な人だったみたい! お願い、戻って! 待って、行かないで!」
声は、よく聞こえない。
でも、唇の動きでわかった。
その言葉が、胸に突き刺さる。
俺は立ち上がった。
でも、もう遅かった。
電車は動き出し、彼女の姿が遠ざかっていく。
次の駅で降りて、すぐに折り返した。
理由なんていらなかった。
ただ、もう一度会わなきゃいけない気がした。
ホームに戻ると、彼女はベンチに座っていた。
肩を落とし、顔を両手で覆っている。
泣いているのかもしれない。
俺はゆっくりと歩き出した。
電光掲示板が、静かに文字を流していた。
~「今度こそ添い遂げよう」~
電車がホームに滑り込んでくる。
彼女の姿が車体に隠れた。
もう1度、会いたい。
俺は彼女のいるホームを目指して、階段を駆け上がった。
──いや、何度でも探そう。
この腕に包み込むまで。
♪Voyage 浜崎あゆみ


