辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
晩餐会の会場に通されると
──そこには涼しい顔のハーウッド卿が立っていた。

「ご無事で何よりでした、皇女殿下。
……そして、あの控室での“大騒動”に付き合っていただき感謝いたします。」

ファティマは眉を上げる。
「あれは、あなたの案だったのね?」

すると横からエレオノール王妃がひょいと顔を出す。

「そうなのよ!ピクシー妖精を使うなんて、ちょっと悪ノリが過ぎるかしらと思ったけど……でも面白かったでしょう?控室に乗り込んできたクレオールの“あの顔”、一生忘れられないわ!」

ファティマとデクランは思わず吹き出す。

ハーウッド卿は肩を竦めて一言。
「王妃陛下に楽しんでいただこうとはりきりすぎて、つい多めにピクシー妖精を忍ばせてしまいました。」

「あの子たちはとっても良い働きをしてくれたわ。私はニフラーも良いかと思ったのだけど、それはエディに止められちゃった。」

「悪夢を思い出させないでくれ、ノーラ。アイツラと来たら部屋をめちゃくちゃにして収拾がつかん。ファティマ殿の指が食いちぎられるかもしれないんだ。」

「あの、ピクシー妖精とは?それからニフラーも何かしら?」

「あ、そうよね。ファティマ様はご存知なかったわよね。私の祖国フィオルガルデ連邦にはそれはそれはチャーミングで不思議な生き物たちがいるの。ピクシー妖精はいたずら大好きな小人たち。ニフラーはモグラのような見た目でキラキラと光るものが大好きなの!たから宝探しにはぴったりな相棒なのだけど、室内で飼うのはねぇ。指輪でもネックレスでもなんでも飛びついちゃうのよ。」
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