辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
一方で世界は、
そんな彼女たちの穏やかな日常とは
対照的に荒れ始めていた。

ドノヴァン侯国では
ファティマの失踪で政務は完全に麻痺。
ドノヴァン侯は怒鳴り散らし、
愛人の前でも取り乱す始末。
若い領主補佐たちは逃げ出し、
臣下たちの不満は爆発寸前だ。

そしてドラゴニア帝国でも、
クレオールの苛政が頂点に達し、
ついに街では人々が
公然と皇弟ビンセントの名を
口にするようになっていた。

クレオールは激昂し、
「ファティマを捜せ!あの女さえいれば全て丸く収まるのだ!」
と部下に怒号を飛ばす。

真逆の二つの世界。
幸せへ向かう者と、
破滅へ転がり落ちる者。

アズールティアの夜風は心地よく、
ファティマは眠るデクランの手をそっと握りながら、
これから訪れるであろう嵐をまだ知らずにいた。
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