辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
デクランもまた、
そんな彼女を見るたび、
胸を熱くさせていた。

散歩の途中で
彼女が魚介の香り漂う通りで足を止め、
好奇心に輝く目で市場の商品を眺めるので、
つい彼も笑いがこぼれる。

「デクラン、あれは何かしら?」
「わかめ。海の草だよ。」
「食べられるの!?」
「食べられるよ。あとでスープにしよう。」

そんな他愛もない会話が、
たまらなく愛おしい。

市場の大将に茶化され、
デクランが堂々と
「彼女は僕の大切な人だ」と言ったあの日から——
ファティマは、
国民たちだけでなく、
姉たちからも完全に家族として受け入れられた。

とある夜——
ファティマは
いつの間にか眠ってしまった
デクランの肩に寄りかかりながら、
静かに思う。

(こんな日々が…こんな幸せが……私の人生に訪れるなんて。)
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