辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
祝福のアズールティア
結婚式の前日。
海風を切り裂くように、
ドラゴニア帝国の皇帝旗を掲げた
巨大な艦隊がアズールティアに到着した。
港に集まった国民たちは、
その圧倒的な威容に思わず息を呑む。
「さすがは帝国……スケールが違う……!」
「ドラゴニアの新皇帝だぞ……!」
みんなの期待通りの威厳そのままに、
白と深紅の皇帝装束をまとったビンセントが
タラップを降り立った瞬間、
その場の空気がぴん、
と張り詰めた。
ファティマは艦隊を見上げながら、
そっと笑みを浮かべる。
かつて幼かった弟が、
いまは帝国を背負う皇帝へと成長した姿
──胸に込み上げる誇らしさに目を細める。
しかし、
ビンセントが姉を見つけるや否や、
その威厳は秒で霧散した。
「姉上ーーーッ!!」
ズカズカッ!
周囲を気にすることなく、
一直線に姉に駆け寄る皇帝。
両腕を広げて突進し、
ファティマをぎゅっと抱きしめる。
「よかった……! 元気そうで……! ちゃんと食べてる? 寝てる? あのデクラン王子、乱暴してない? 不安にさせてない? 嫌なことあったらすぐ言ってね? 僕が迎えに──」
「ちょ、ちょっと落ち着いて、ビンセント……!」
周囲のアズールティアの王族、家臣たち、国民たちは
──この人ほんとに皇帝……?
と目を丸くしていた。
デクランも苦笑しながら、
「ええと……ファティマを泣かせるようなことは、絶対にしませんので……」
と控えめに頭を下げるが、
ビンセントはぎろり、
と鋭い眼光を向ける。
「……本当だろうね?
姉上は世界一素晴らしい女性なんだ。美人で頭が良くて、賢くて、優しくて。姉上を泣かせたら……僕、君の国ごと焼くよ?」
「ビ、ビンセント!?!?」
「あはは、冗談だよ?」
慌てるファティマに
ビンセントはニコニコ微笑むが
目は全く笑っていなかった。
周囲が完全に沈黙する中、
唯一、
ラジワだけが大笑いしていた。
海風を切り裂くように、
ドラゴニア帝国の皇帝旗を掲げた
巨大な艦隊がアズールティアに到着した。
港に集まった国民たちは、
その圧倒的な威容に思わず息を呑む。
「さすがは帝国……スケールが違う……!」
「ドラゴニアの新皇帝だぞ……!」
みんなの期待通りの威厳そのままに、
白と深紅の皇帝装束をまとったビンセントが
タラップを降り立った瞬間、
その場の空気がぴん、
と張り詰めた。
ファティマは艦隊を見上げながら、
そっと笑みを浮かべる。
かつて幼かった弟が、
いまは帝国を背負う皇帝へと成長した姿
──胸に込み上げる誇らしさに目を細める。
しかし、
ビンセントが姉を見つけるや否や、
その威厳は秒で霧散した。
「姉上ーーーッ!!」
ズカズカッ!
周囲を気にすることなく、
一直線に姉に駆け寄る皇帝。
両腕を広げて突進し、
ファティマをぎゅっと抱きしめる。
「よかった……! 元気そうで……! ちゃんと食べてる? 寝てる? あのデクラン王子、乱暴してない? 不安にさせてない? 嫌なことあったらすぐ言ってね? 僕が迎えに──」
「ちょ、ちょっと落ち着いて、ビンセント……!」
周囲のアズールティアの王族、家臣たち、国民たちは
──この人ほんとに皇帝……?
と目を丸くしていた。
デクランも苦笑しながら、
「ええと……ファティマを泣かせるようなことは、絶対にしませんので……」
と控えめに頭を下げるが、
ビンセントはぎろり、
と鋭い眼光を向ける。
「……本当だろうね?
姉上は世界一素晴らしい女性なんだ。美人で頭が良くて、賢くて、優しくて。姉上を泣かせたら……僕、君の国ごと焼くよ?」
「ビ、ビンセント!?!?」
「あはは、冗談だよ?」
慌てるファティマに
ビンセントはニコニコ微笑むが
目は全く笑っていなかった。
周囲が完全に沈黙する中、
唯一、
ラジワだけが大笑いしていた。