辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
そうやって必死に自分の気持ちを押し殺す
ファティマのもとに、
今日も手紙が届いた。
それは交易書類の中に紛れていた。

「……デクランからの手紙だわ」
封を切ると、
柔らかく、でも誠実な文字が並んでいる。

『侯妃様
僕はいつも、篝火のダンスのことを思い出しています。
侯妃様の笑顔が、ずっと頭から離れません。
僕は……ただ、侯妃様が笑っていてくれることを願うばかりです。
どうか無理をせず、侯国での日々を少しでも楽しんでください。
デクラン』

胸がじんわり熱くなる。
侯国の孤独や冷たさを思い出すたび、
手紙は彼女に小さな光を灯した。

ファティマも返事を書き始める。
「あなたの言葉に励まされます……侯国での仕事は厳しいけれど、手紙を読むたび、少し勇気が出るのです」

そしてまた、
手紙を交易書類に忍ばせて送り出す。
こうして二人の文通は、
誰にも知られることなく
密やかに続けられていったのだった。
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