辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
数日後。
王宮に、彼宛の“見慣れぬ封蝋”の手紙が届いた。
差出人を見て、デクランは思わず息を呑む。

アルドレイン王国王妃――フィロメナ。

アルドレインという国は知っていたが、
国王はおろか王妃とは何の面識もない。
自分に何の用があるのだろう?

しかし手紙を開いた瞬間、
彼の心臓は激しく脈打ち始めた。

『はじめまして。
アズールティア王国デクラン王子殿下。
私はアルドレイン王国のフィロメナと申します。

あなたに知らせたいことがあり、
こうして筆を執りました。
突然のご無礼をお許しください。

ドノヴァン侯国ファティマ侯妃は
私の異母姉に当たります。
姉上は、現在ドラゴニア帝国にて軟禁されています。
皇帝クレオール陛下の命により、
自由を奪われているのです。
このことを誰かに託さねばと思い、
姉が信頼しているあなたにお伝えすることにしました。』

デクランの視界が揺れた。
(軟禁……? なぜ……?)

『戴冠式で姉と会いました。
わずかな時間でしたが言葉を交わすことができ、
姉はあなたとのことを話してくれました。
アズールティアで過ごした日々が、どれほど彼女の救いだったか――
それは、表情を見るだけで分かりました。
私の知っていた姉はいつも誇り高く、女王のような威厳を持った人でした。けれどあなたのことを話すときは、少女のように可愛らしく、幸せそうに目を細めていたのです。あのような姉を見るのは初めてでした。』
< 33 / 165 >

この作品をシェア

pagetop