辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
震える手で続きを読む。

『私が嫁いだ国アルドレインはドラゴニアの支配下にあり、私たちが表立って助けに動くことが難しい状況にあります。
ですが、あなたの国は、まだドラゴニアの圧政が届いていない――あなたなら姉を救える可能性があります。

必ず協力します。
どうか、アズールティアより我が国へお越しください。
あなたしかいないのです。

フィロメナ』

手紙が震える指先から落ちた。

デクランは、両手で顔を覆った。
(……僕なんかが、ドラゴニア皇帝に……?
正面から敵うはずが――)

喉の奥から、弱気な吐息が漏れた。
(でも……ファティマが……苦しんでいる……)
決意と恐怖が入り混じり、
胸が締めつけられる。

そんな弟の落ち込みように、
デクランの四人の姉たちはすぐに気づいた。

デクランが部屋に呼ばれ、事情を話すと――

「は?」
「軟禁?」
「ドラゴニア皇帝が相手だから無理? なにそれ?」

同情と慰めを期待していたデクランに、
返ってきたのは怒号だった。

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