辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
最も年の近い姉ルチアは腕を組み、
ぐいっと顔を近づける。
「アンタ、好きな子が困ってるのに何やってんの?」

三女セレナはぽん、と弟の背中を叩く。
「デクラン。女を迎えに行くのに理由なんているの? 行きなさいよ」

次女ベリルは鼻で笑った。
「“僕なんかが”じゃないわよ。
あんた、荒くれ者の海の男たちを束ねるアズールティア王家の血筋なんだから、誇りを持ちなさい」

長女アリアンヌは優しく肩に手を置いた。
「ファティマを愛しているなら……助けに行きなさい。
男でしょ、デクラン」

四人に囲まれ、逃げ場は一切ない。

だが、彼の胸の奥に――
熱が灯った。
(ああ……そうか。僕は……ファティマを……愛している)

そして静かに、はっきりと口を開いた。
「……行く。ファティマを必ず連れ戻す。どんな敵が相手でも」

姉たちは同時に笑った。
「それでこそ私たちの弟!」
「行ってきなさい!」
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