辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

救出の旅路

アズールティアを出て三日の夜明け――
デクランを乗せた船は、
薄い霧に包まれたアルドレイン王国の港へ入った。

青い海に映る白い塔。
交易で栄えるその港には、
ドラゴニア帝国の旗が掲げられた船が
何隻も停泊している。

フィロメナ王妃が差し向けた使者に
王宮へ案内されたデクランは、
落ち着いた深紅のドレスを纏った
フィロメナ王妃と対面する。

透き通るような薄金色の髪。
大陸一の美貌の王妃と称されるだけあって
思わず見惚れるほど美しい。
そしてその面差しは
やはりどこかファティマと似ていた。

「……お待ちしておりました、デクラン殿下。
本当に、来てくださったのですね」
彼女は安堵の息を吐き、肩を撫で下ろした。

デクランは静かに頭を下げる。
「この手紙を読んで、来ない選択肢はありませんでした。
どうか……ファティマ様の居場所を教えてください」

フィロメナはうなずき、
デクランを隣室へ案内する。

そこは王宮の中でも、
あまり使われることはない“小さな応接室”。
重厚な扉を閉めると、外の物音は完全に遮断された。

(……秘密を話すための部屋だ)

デクランは無意識に息を飲む。
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