辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
綱渡りの逃走
ヴァリニア国王がドラゴニア帝国へとやって来る日。
王宮の空気は、
来賓を迎える緊張で張り詰めていた。
入場門の前に馬車が到着し、
ヴァリニア王家の紋章が金色に輝いた瞬間──
兵も侍女たちも一斉に姿勢を正す。
美しい白銀色の馬車から降り立ったのは、
堂々とした佇まいの エドリック国王 と、
優雅でありながらどこか鋭い眼差しを持つ
エレオノール王妃。
彼らを出迎えたのは、
クレオールではなく──皇弟ビンセント。
「遠路はるばるようこそ。
ドラゴニア帝国皇子、ビンセント=ドラゴニアでございます。」
エドリックは柔らかい笑みを浮かべ、
力強くビンセントの手を握る。
──その瞬間。
ビンセントの掌に、
小さな折り畳まれた紙片が滑り込んだ。
ビンセントは表情ひとつ変えず握手を終える。
ヴァリニア国王夫妻を貴賓室まで送ると、
人影のない廊下に移動し、
そっと紙を開いた。
『騒ぎは晩餐会直前に起こす』
短いが決定的な一文。
ビンセントは息をのみ、
すぐに王宮内に紛れ込ませていた
“従者に扮したデクラン”へとメモを渡す。
「ヴァリニア国王が機会をつくってくださる……姉上を、必ず救おう」
「もちろんです」
デクランの低い声は揺らがなかった。
王宮の空気は、
来賓を迎える緊張で張り詰めていた。
入場門の前に馬車が到着し、
ヴァリニア王家の紋章が金色に輝いた瞬間──
兵も侍女たちも一斉に姿勢を正す。
美しい白銀色の馬車から降り立ったのは、
堂々とした佇まいの エドリック国王 と、
優雅でありながらどこか鋭い眼差しを持つ
エレオノール王妃。
彼らを出迎えたのは、
クレオールではなく──皇弟ビンセント。
「遠路はるばるようこそ。
ドラゴニア帝国皇子、ビンセント=ドラゴニアでございます。」
エドリックは柔らかい笑みを浮かべ、
力強くビンセントの手を握る。
──その瞬間。
ビンセントの掌に、
小さな折り畳まれた紙片が滑り込んだ。
ビンセントは表情ひとつ変えず握手を終える。
ヴァリニア国王夫妻を貴賓室まで送ると、
人影のない廊下に移動し、
そっと紙を開いた。
『騒ぎは晩餐会直前に起こす』
短いが決定的な一文。
ビンセントは息をのみ、
すぐに王宮内に紛れ込ませていた
“従者に扮したデクラン”へとメモを渡す。
「ヴァリニア国王が機会をつくってくださる……姉上を、必ず救おう」
「もちろんです」
デクランの低い声は揺らがなかった。