辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
玉座の間での会談。
クレオールは飾った笑顔の裏で、
ヴァリニア国王夫妻への警戒を隠そうともしない。
ヴァリニア王国とドラゴニア帝国は
友好国ではないのだ。
しかも愚かな前皇太子マルヴァリスのせいで
ドラゴニアは惨敗を喫していた。
おかげで帝国の求心力は低下している。
これ以上、足元を掬われてはならない。
そんなクレオールの胸中などどこ吹く風で、
エドリックが穏やかに告げた。
「晩餐の前に、短時間で構わない。
ファティマ殿と再会の時間をいただきたいのだ」
その言葉に、
クレオールの眉がピクリと動く。
「姉上は多忙だ。晩餐会には出席するのだから、わざわざ時間を割く必要は──」
「……彼女は、私の大切な“友人”です。
かつて外交の席で幾度も助言をくれ、理想の国家運営について語り合った大切な友。
彼女の結婚を祝う暇もなかった不義理を、正したいと思っている。」
拒否は許さないとでもいうような
その堂々とした言葉に、
侍従たちも息を呑む。
クレオールはしばし沈黙し、
やがて舌打ちを飲み込みながら言った。
「……短時間ならば良いだろう」
その瞬間、エドリックはわずかに口角を上げ、
クレオールの背後に控えていたビンセントへ目を向けた。
ビンセントはその合図を理解し、
静かに深く頷いた。
クレオールは飾った笑顔の裏で、
ヴァリニア国王夫妻への警戒を隠そうともしない。
ヴァリニア王国とドラゴニア帝国は
友好国ではないのだ。
しかも愚かな前皇太子マルヴァリスのせいで
ドラゴニアは惨敗を喫していた。
おかげで帝国の求心力は低下している。
これ以上、足元を掬われてはならない。
そんなクレオールの胸中などどこ吹く風で、
エドリックが穏やかに告げた。
「晩餐の前に、短時間で構わない。
ファティマ殿と再会の時間をいただきたいのだ」
その言葉に、
クレオールの眉がピクリと動く。
「姉上は多忙だ。晩餐会には出席するのだから、わざわざ時間を割く必要は──」
「……彼女は、私の大切な“友人”です。
かつて外交の席で幾度も助言をくれ、理想の国家運営について語り合った大切な友。
彼女の結婚を祝う暇もなかった不義理を、正したいと思っている。」
拒否は許さないとでもいうような
その堂々とした言葉に、
侍従たちも息を呑む。
クレオールはしばし沈黙し、
やがて舌打ちを飲み込みながら言った。
「……短時間ならば良いだろう」
その瞬間、エドリックはわずかに口角を上げ、
クレオールの背後に控えていたビンセントへ目を向けた。
ビンセントはその合図を理解し、
静かに深く頷いた。