辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
箱の中から、甲高い叫び声が。
「キィィィィィ!!!!!」

飛び出してきたのは、
何やら人の形をした20センチほどの物体。
それが何なのかファティマには分からず、
声にならない悲鳴とともに後ずさる。

ファティマが知らないのは当然だが、
彼らはいたずら大好きピクシー妖精。
エレオノールの祖国フィオルガルデ連邦に
生息する妖精の一種である。

ピクシーたちは開放された喜びと
狭いところに閉じ込められた鬱憤が爆発し、
侍女の髪を引っ張り、
兵士の耳を噛みつき、
棚の上の壺を叩き落とし、
スカートの中にもぐりこんで大騒ぎ!

「きゃああああ!!」

「動くな!捕らえ──ぐあっ、噛むなっ!!」

「ひっ、ひぃぃぃ!!」

控え室は一瞬で
阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

監視役の兵士たちはピクシー捕獲に必死で、
ファティマの存在に意識を割く余裕などなくなる。

エドリックはわざとらしく肩をすくめる。
「おやおや、失礼。どうやら包装が甘かったようだ」

エレオノールは扇子で顔を隠して
優雅に微笑む。
「あらあら、いたずらっ子たち。こっそり紛れ込んでしまったのね。」
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