辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
ピクシー妖精の 活躍で!?
混乱が最高潮に達したその時。

控え室の扉がすっと開き、
そこへ滑り込んだのは──

従者の服に扮したデクラン。

「皇女殿下、こちらへ」

その声にファティマの心臓が跳ね上がる。
「え、あなた……デ、デクランなの……!?」

「説明は後で。今すぐ!」

手を伸ばすデクラン。
ファティマは迷いなくその手を掴む。

(来てくれたのね……! 本当に……!)

胸が熱くなる暇もなく、
デクランはファティマの腰を抱き寄せ、
乱れた廊下へと駆け出す。

廊下の先では──

レオナード が兵士を誘導して退路を作り、
マリナ は煙幕を使って混乱を増幅させ、
他の仲間たちも周到に仕掛けを動かしていた。

「通路確保! 急げ!」

「南棟の裏口から出れば、馬が待っています!」

息を合わせ、全員が動く。
騒ぎを聞きつけたクレオールがやって来る前に
ファティマを城からの逃さなければならない。

ビンセントも既に宴会場裏に向かっており、
クレオールの目をそらす役を引き受けている。

すべてが、
わずかな隙に賭けた綱渡り。

デクランはファティマの手を強く握り、
「絶対に……あなたを外へ連れ出す!」
と、静かに宣言した。
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